PersonalScenarioBody.fmg None DarkSouls3 False 遥か故郷より、霧深い海を渡り 追跡者はリムベルドに辿り着いた 夜渡りの戦士は、その存在と記憶を擦り減らしながら戦う どれだけの夜を戦い続けているのか、もはや定かではない だが、一つだけ確かなことがある 夜の王を追い、そして屠る ただその一事のみが、追跡者の為すべきことだ …そのはずだ 言い聞かせながら、追跡者は掌中のそれを握りしめた 片割れしかない耳飾りを %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 円卓の片隅、薄暗い室内に天井から光が射し込んでいる 追跡者は手にした耳飾りを頭上にかざす 光に透かされ、刻まれた文様が浮かび上がるが 意味を持った形にはならない 追跡者は確かに知っている そこには文字が… いや、ある一節が刻まれていることを だが、どうしてもそれが思い出せない どこで失ったか分からないが もう片割れを見つけられれば、思い出せるだろうに… %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 故郷を夢に見た 風鳴り丘を、二頭の馬が駆けている 双子の馬がまともに育つことは稀だ 追跡者にとっても、   にとっても、二頭は特別だった 丘の頂で轡を並べ、隣に目をやる しなやかな髪が風に踊り、左耳の耳飾りが揺れている だが… その顔は、がらんどうで、どうしても埋まらない 「…追跡者サマ、いらっしゃいますか」 召使人形の声が、追跡者を呼び覚ました きっと、またいつもの頼み事だろう %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 再び片割れとなった耳飾りを握り、追跡者は眠りに落ちた 風鳴り丘に、日が落ちかけている その名を示すように、身を切る風が鳴り止まない じき約束の冬が来る 初霜が降りる頃には、片割れは旅立ち、もういない 押し黙る追跡者に、   は、いつもの笑みをこぼした そして耳飾りを指で弾く 「しばしの別れです、兄上  事を成せば、また会いましょう」 名前さえ未だ思い出せぬ。だが、妹は確かにそう言っていた %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 妹のことを秘めたまま、追跡者は戦い続けていた すべては事を成した、その先にあるのだから 円卓に戻ると、召使人形からの置手紙が残されていた  なぜ、あの耳飾りに追跡者サマが固執されたのか…  私なりに考えておりました  そして気づいたのです  お二人は… とても、よく似ておいでだと  私には、それが分かるのです  貴方サマに知っていただきたいことが、ございます  どうか書庫をお検めください %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 幾度となく、あの日の夢を見る 長い夜は、同胞たちを狂わせ 争いの後、風鳴り丘には、ただ無数の墓標だけが残った 従弟のファルハドではなく、幼いシリンではなく そして長たる父でもなく、生き残ったのは自分だった だからこそ、必ず復讐を果たし、夜を終わらせねばならぬ だが… 「事を成せば、お別れね」 夜の終わりのその先に 双子の馬が並んで駆けることは、もう無い %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 大剣を抱え、追跡者はまどろんでいる 不意に、衣擦れと 次いで硬質な… 何かが置かれる音がした 追跡者は目を覚まし、ゆっくりと身を起こした %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 掌中の銀の雫は、柔らかく脈打っている 追跡者の荷物の傍らには 見覚えのある、ひとつのブローチが置かれていた 離れていても共に戦えるよう、縁となるものを戦士に託す その風鳴り丘の風習を、妹も覚えていたのだろうか… 習わしの通り外套にブローチを付け、そっと手を添える 「事を成せば、お別れだ」 双子の馬が並んで駆けることは、叶わない だが、願わくは、その片割れだけでも %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% やがて、新たな夜の王が生まれた 円卓は消滅をまぬがれ、作り変えられるだろう 新たな夜に備えるために それは巫女を解放するに足るものだったか 確かめる術は、もはや男にない 王は歩み続ける たとえ、双子の馬が再び出会うことがないとしても 召使人形からの手紙 レディが円卓に導かれ、間もない頃のもの  こうしておいでになる日を、待ち侘びておりました  巫女サマが円卓を導き、夜の王を屠る  それをお支えするために、私は配されたのです    お庭には花々が咲き誇っておりますし  書庫に古今の名著、東西の稀書のご用意があります  お食事についても、何なりとお申し付けを  ああ、それから。どうか、お召替えください  今はもう義賊ではなく、円卓の巫女サマなのですから %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 召使人形からの手紙 追跡者が円卓に導かれた時のもの  新しい英雄サマのご容態  落ち着かれたようで何よりです  この円卓に導かれる前  外の世界で負われた傷だったのでしょうか…  当面、私の方でも経過を見守ることにいたします  ともあれ  夜渡りの戦士サマの来訪は、喜ばしいことです  立派な大剣の遣い手のご様子  きっと夜との戦いで、お力になってくださるはず %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 召使人形からの手紙 他愛のない、日々のやり取りの一つ  ご用命いただいているパンですが  なかなか上手くいかず、申し訳ございません  無頼漢サマにもお味見を手伝っていただいていますので  今度作る際には、きっとお味を近づけてみせます  ところで、無頼漢サマといえば  何やら巫女サマにお話があるご様子でした  お声がけしてみてはいかがでしょうか %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 召使人形からの手紙 幾度か書き直したような跡がある  追跡者サマのことですが…  残念ながら、こうしたことは、ままあります  円卓に導かれるより前  外の世界で負われた傷が原因で  生命力が弱られているものと推察されます  夜の王打倒が叶ったとき  あの方は不帰の客となりましょう  それでも、私たちは歩みを止めてはならないのです %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 召使人形からの手紙 幾度か書き直したような跡がある  追跡者サマのことですが…  残念ながら、こうしたことは、ままあります  円卓に導かれるより前  外の世界で負われた傷が原因で  生命力が弱られているものと推察されます  夜の王打倒が叶ったとき  あの方は不帰の客となりましょう  それでも、私たちは歩みを止めてはならないのです %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 召使人形からの手紙 焦っているのか、筆致にやや乱れがある  巫女サマが追跡者サマのことを深く案じ  悲しんでおられること、存じ上げております  私の方でも、あの方のご様子を伺っておりましたが  何かの支度をなさっていた痕跡があります  そして、今日はお姿が見えません  生命力の衰弱を踏まえると、万が一ということもあります  どうか追跡者サマをお探しください  おそらく、円卓のどこかにはいらっしゃるはず… %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 召使人形からの手紙 いつにもまして丁寧に、書き綴られている  夜を渡るうち、どれほど大切な想いも、零れてゆくもの…  お兄サマの記憶を取り戻されたのは、僥倖と言えましょう  ですから、行く末を案じられるのは分かります  …しかし、これだけはお忘れなきよう  私たちは、夜の王を屠るため円卓に集ったのです  皆サマもまた、巫女サマのことを案じられています  とりわけ無頼漢サマは、気を揉まれておいでです  お声がけしてみては、いかがでしょう %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 召使人形の書いた手紙 破り捨てられ、結局は差し出されなかったもの  ご存じの通り巫女サマは、円卓に縛られておいでです  ですが生きた体ではないのなら  円卓から送り出すことが叶うやもしれません  そのためには… レディは破られた紙片を握りしめていた 手放しかけていた思いを、そうするように %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 召使人形の書いた手紙 破り捨てられたそれを、繋ぎ合わせたもの  そのためには…  死に瀕した外界の追跡者サマに繋がる  縁となるものが必要です  あの方が身に付けていたものに、祝福を授ければ  それが縁となりましょう  ですが、これは言わば賭けのようなもの  そして何より、巫女サマを独り残してなど… %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 召使人形に向けた手紙    私を支えてくれた友へ  祝福した縁を辿り、どうか兄を救って欲しい  その為にも、まずは夜の王を片付けるとしよう  私は、どちらかではなく、どちらも為そうと思う  それが叶うと、今ならば信じられる  この髪留めが、私を奮い立たせてくれるから 近海の海賊は、何より好敵手を求める ゆえに無頼漢は、自らリムベルドに乗り込んだ 夜の王の襲来が、己の求めるものをもたらす そう直感したのだ 円卓に足を踏み入れたとき 無頼漢はそれが正しかったと理解した 白角の兜を通して、かすかに、だが確かに… かつての近海と同じ、波のさざめきを感じる %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 無頼漢は兜を脱ぎ、ゴトリと床に置いた 夜との戦いに果ては無く、飽く暇もない …だが、一方でどこか満たされぬものがある 「そうは思わんか、戦友よ」 ぼやきながら無頼漢は、己の愛用の兜 その白角をゴンゴンと小突いた 傷だらけの角が、今までの戦いの歴史を物語っている 魂をぶつけ合うような死闘。血潮たぎる好敵手 円卓のどこかから、その気配がするのだが… %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 狭間杯の戦いを終え いつものように白角の兜と向き合った 悪くない気分だ。だが、まだ足りない そして、召使人形の言葉を思い起こす 「運命の相手と巡り会える、か」 近海の海賊にとって、それ以上の宝は無い %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 戦いの予感が、近海での古い記憶を呼び起こす 「あー… 生きてますか、船長?」 航海士の風見鶏が、波打ち際に倒れた無頼漢を呼ぶ 無頼漢は目深にかぶった兜を、乱暴に叩いて答えた その拍子に血が噴き出したが、構いやしない 「…やあ、ずいぶんお元気そうで」 風見鶏は呆れた風に言いながら、何かを熱心に書いている そして無頼漢の視線に気づき、不敵に笑った 「せっかく、化け物同士の死闘を間近で見たんだ  書き物で一山あてようかと思いましてね」 %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 狭間杯の戦いを終えた無頼漢に、鉄の目が尋ねる 「白角と黒爪…だったか。興味をそそられる話だ  近海では決着がつかなったというが、その訳は?」 この施設の暗殺者は、こと戦いに関してはいつもより饒舌だ 「がはは、さてな…  どうあれ、一つ言えることがある」 無頼漢は笑い、それから兜をゴンと叩いた 「近海の男は、戦いの約束を忘れやしない  いついかなる時もな」 %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 無頼漢は待った 狭間杯の最後の戦い。その始まりを 召使人形が、石碑を探りながら告げる 「戦いを告げる合図が見られません  おそらくは、決勝戦のお相手に何かが…」 無頼漢の腹は決まっている こうした時は待つしかない 決まって奴は遅れて来るのだ %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 潮の匂いが、近海での古い記憶を呼び起こす 約束の浜辺に座す無頼漢に、風見鶏が告げる 「…諦めな船長、奴は夜に飲まれたんだ」 無頼漢は闇に沈んだ西の海を望みながら、白角の兜を叩いた 「もうしばらく、こいつは預かっておくさ」 古い記憶と向き合ううち、かすかに波のさざめきが聞こえた その兆しに、無頼漢は静かに目を開く 俺たちの戦いは、いつだって海に呼ばれているのだ %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 約束の戦いは果たされ、狭間杯はその幕を閉じた 白角の兜を、その持ち主に返し、無頼漢は黒爪に戻った 心地よい風が頬を撫でる 風見鶏ならば、この戦いを何と締めくくっただろうか… 近海の海賊は、何より好敵手を求める だが今は、波のさざめきは聞こえない 無頼漢の海は、ただ凪いでいる 鎧と混じり合った 我が身 絵筆を 手に取る 己が存在 向き合うために 描き上げたもの それこそ 我が記憶の断片 %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 黄金樹  私は 絵描き  遠く葦の地から流れ着き 魅せられた  完成 していない  何かが 欠けている %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 花  じんわり ぬくもり感じる  あばら屋の画室 咲いていた 同じ花  私は 絵描き 黄金樹を描いていた  私は 客人 剣を携えていた  私は 物言わず それを見ていた %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 客人  私は 客人  あるいは 私にとって 処刑人  客人の男 告げる  せめて 待ってやろう  「黄金樹」の 完成までは %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 古い友  「黄金樹」 未だ完成せず  息抜きに 描いた習作  葦の地からの 古い馴染み  物言わぬ友  この古い友 客人に託そう  「黄金樹」は どうやら間に合わぬ  じき 来るだろう 代わりの処刑人 %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 坩堝の騎士  私の 客人  あるいは 私にとって 処刑人の肖像  坩堝とは 混じりもの  客人は どちらかに 決められず  黄金樹を望む 画室にて  最期のあの時まで %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 執行者  二人と一振り それこそが私  いかにも血塗られている  だが 夜を屠るには役立とう  そして  夜を渡った その先で  きっと「黄金樹」を 私は「深き森の魔女たち」の一人 同志たちは、私を隠者と呼ぶ 森の深奥を離れ リムベルドまで訪れたのには理由がある 影にまつわる、探しものをするつもり %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 私は、そう 「大切な幼子」を探してる 手がかりを集めて、見つけ出さなくては まずはお手伝いさんに、聞いてみようかしら  ■手がかり:大切な幼子  魔女である私が、生み出した子  名前は付けてないけれど、「かじりやさん」と呼んでいた  古い魔力を辿って、大まかな居場所まではつかんでる  このリムベルドのどこかに、きっといるはず  この子と夜の繋がりを探るため「夜の欠片」を見つけたい %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% お手伝いさんの調べ物を待つ間、旧い友のことを想う 幼子を見つけるのは いまは亡き彼女への贖罪でもあるのだから  ■手がかり:輪の魔女  旧い友で、学びの同志  それから、幼子の乳母でもあった  「かじりやさん」は、食いしん坊で見境がない  だから、食事のお世話は彼女にお願いしてた  輪の魔女は、欺瞞の魔女  そうした手管は、お手の物だもの 得られた痕跡が、推測の正しさを裏付ける 多くの王が蔓延っているのは、先触れに過ぎず 王たらしめる力を導いている者が、その後ろにいる もう少し集められれば、核心に触れることができる やはり、考えに間違いはないようだった 夜の力は、古い魔力とよく似た性質を見せている どこか懐かしく、親しみのある、身近なもの… あの子は、きっと近くにいる %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% お手伝いさんからの書置きがあった どうやら調べ物が進んだみたい 夜の欠片から、あの子の痕跡を辿れるかもしれない 欠片を返してもらって、確かめてみましょう  ■手がかり:お手伝いさん  木の人形に見える  最近は調べ物を手伝ってくれてる  そのせいで、忙しいのかしら  他の戦士さんとお話しているのを、近ごろ見かけない  何だか影が薄くなっちゃったみたい %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 夜の欠片を使って、あの子に繋がる痕跡を見つけた あらためて、見つけた手がかりを確認してみましょう  ■手がかり:夜の痕跡  夜の欠片の噛み痕と、円卓に紛れ込んでた夜の痕跡…  どちらからも、私が込めた古い魔力を感じる  私の幼子は、あの日、姿を消してしまった  そのあと、きっと… どこかで夜の王にまみえたのね  あの子の食欲は旺盛で、何の影にもかじりつく  きっと夜の王の影も、おいしそうに見えたことでしょう  かじったそのあとは、いったい、どうなったのかしら… %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 夜の痕跡からは、もう一つ、懐かしい魔力を感じた 幼子へ至る鍵は、彼女にある。死んだはずの、輪の魔女に 手がかりを元に、円卓に隠れた彼女を見つけてあげましょう  ■手がかり:輪の魔女の最期  ある大きな戦に臨んだ時、幼子は敵軍の影を貪り蹂躙した  そして… 我を失い、私たちに牙をむいた  今なら分かる。あの子はただ、怯えていたのだと  けれど私は、それを抱き止めてあげられなかった  代償として、私は旧い友を喪った  今も鮮明に覚えている。影を失くした、彼女の亡骸を %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% はじまりの場所に、赤子の泣き声が響く 引き寄せられるように声の元へ辿り着くと 隠者は、ただそっと、赤子を抱いた 輪の魔女は、感謝を告げて消えていった 隠者は残されたローブを携え、その場を後にした %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 夜の王と共にいるあの子が、私に託した最後の手がかり  ■手がかり:骨のような石  石にそっと触れる  そうすると、かすかに幼子の声が聴こえる  どうか、待っていて  必ずあなたの元へ行くわ %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 「我らが夜を愛してくれて、ありがとう」 旧い友の別れの言葉 その残響を抱えながら、私はただ幼子を抱きしめる あの日、できなかったことを 今はもう、泣き声は止んだ 胸の内の柔らかな夜は、ただ静かに眠っている 「施設」から、鉄の目へ宛てた指示書  親愛なる施設の子、鉄の目へ  「蝙蝠耳」から、知らせを受けました  ご苦労さま。報酬は送っておきます  近く大きな「仕事」が入りそうです  おそらく、狭間の地へ向かってもらうことになるでしょう  仔細は追って連絡します  追伸 先日の件は忘れてください。世迷言でした             あなたの後見人、イゾルデ %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 「施設」から、鉄の目へ宛てた指示書  親愛なる施設の子、鉄の目へ  昏き谷の寄宿舎が壊滅した件は、把握していますね  裏切者を探し出し、除籍なさい  狭間の地に向かい、足跡を辿るのです  常の通り、その過程の一切に施設は関知しません  路銀も、情報も、あるいは協力者も  あなたの「仕事」で稼ぐのです             あなたの後見人、イゾルデ %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 鉄の目から「施設」へ宛てた報告書  後見人、イゾルデへ  定期報告  届くあては無いが、書き残す  裏切り者の痕跡を辿り、円卓に着いた  巫女と呼ばれる協力者も得た  手掛かりは少ないが、いつも通りと言える  「仕事」は順調だ                鉄の目 %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 「施設」から、鉄の目へ宛てた指示書  親愛なる施設の子、鉄の目へ  「怪物」のことは知っていますね  その後見人が、殺されて久しいことが判明しました  昏き地の寄宿舎が壊滅した時期とも、符合しています  裏切り者は怪物である公算が高いでしょう  用心なさい  あの子もまた、施設に育まれた百足の申し子なのですから             あなたの後見人、イゾルデ %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 鉄の目から「施設」へ宛てた報告書  後見人、イゾルデへ  裏切り者の… 怪物の手掛かりを得た  「施設」の者同士だ  長い戦いになるだろうが、問題ない  除籍を果たしたら、報告する  追伸  私の荷から封がされた手紙を見つけました  規則に従い、進展なければ開封します、マスター                鉄の目 %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 鉄の目へ宛てた、血にまみれた手紙  施設の申し子たちは、役割を終えれば除籍される定め  それゆえ、私は夢想しました  夜の力で理を覆すことを  育んだ申し子が、果てなき夜を渡り、戦い続ける様を  夜が明けぬ限りは、それが叶う  …ですが、それは愚かな過ちでした  あなたにその残酷な可能性を伝えるべきではなかった  どうか迷いを捨て、信じる道を進んでください             あなたの後見人、イゾルデ %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 鉄の目から「施設」へ宛てた報告書  後見人、イゾルデへ  定期報告。届くあては無いが、書き残す  裏切り者を除籍した  あとは夜の王を倒すのみだ  追伸  安心してください、マスター  私に迷いなどありません                鉄の目 %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 鉄の目から「施設」へ宛てた最後の報告書  後見人、イゾルデへ  あなたは、この上ない後見人でした  俺が渇望したものを  「施設」のくびきから解き放たれる可能性を  示してくれたのですから  感謝します、マスター  これで、私の夜はまだ、終わりません                    守護者は翼の国で生まれ、そして鳥人騎士となった 故国を守る、そのために 守護者の欠けた記憶には、二つの「群れ」がある 守れず失った、故国の古い群れ そして… 共に夜を渡る、新たな群れの記憶だ %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% これは、新しい群れの記憶 円卓に導かれ、ある一人の魔女と守護者は巡り会った 「これで良し。以前ほどには、飛べないでしょうけれど…」 そう呟き、隠者は翼を労わるように、そっと撫でる 守護者は己の翼を蝕む呪いが、抑えられているのを感じた 丁重に礼を言うと、隠者はただ静かに首を振った 「…気にしないで。こういったことのための、学びだもの」 守護者は、山と積まれた本に目をやった 知識があれば守れたものが、あったのかもしれない… いつしか守護者は、彼女を「先生」と呼ぶようになった %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% これは、古い群れの記憶 編隊が空を渡り、まるで一つの生き物のように自在に動く 守護者は風を切りながら、眼下の城塞を見た 城壁の弩から放たれた槍が、迫ってくる 「肩羽」たる自分たちの役目だ 守護者たちが群れの前に出て、槍を盾で弾くやいなや 入れ替わりに「鉤爪」たちが、城塞に鋭く突っ込んでゆく この城も、間もなく落ちるだろう 戦場において、群れは完全だった あの呪いの刃が、その翼を蝕むまでは %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% これは、新しい群れの記憶 守護者には、円卓で一つ学んだことがあった 「がはは、いいからかぶってみろ。せっかく直したんだ」 この無頼漢と言う男は、やかましい 「こいつは騎士様におあつらえ向きだと、ピンと来たんだ」 そしてお節介で、聞く耳を持たない 兜を押し付けられ、思わず守護者は強く振り払った この男に悪気などあるわけが無い だが、兜は捨てたのだ。守るべき群れを失った、その時に %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% これは、古い群れの記憶 取り返しのつかぬ敗戦で、守護者は一人生き長らえた 戦場において、群れは完全だった どのような敵も打ち倒してきた 鳥人の騎士は死を恐れない それは、全体のための誇りある役目であり 代わりの羽が群れを必ず補うのだから だが呪いの刃は… 飛べなくなるという恐怖は 群れの完全さを容易く奪っていった 呪いの前に、守護者の盾は役には立たなかった %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% これは、新しい群れの記憶 書庫にいると、不意に香ばしい小麦の匂いが鼻をくすぐった あの無口な戦士の、気まぐれな調理が始まったのだろう 匂いに誘われ庭へ出ると、海賊の豪放な笑い声が聞こえた 射手が狙いを付けた弓が、大男に向いている もう止めはしない。彼らなりの暇つぶしだと知っているから 物言わぬ剣士は、意に介さず、ただイーゼルに向かっている 完全には程遠く、実に不揃いだ この集まりを、果たしてそう呼んで良いものか そうした頃に、見慣れぬ商売人はやってきた %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% これは、新しい群れの記憶 商人を排除したあと、守護者の背後から声がした 「群れを守るため、かしら」 そこには、隠者の姿があった 「はい、先生。今はこの円卓が… 私の群れなのです」 守護者の言葉に、隠者はただ静かに頷く 「…翼人の掟は知ってるわ。危険因子は排除しなければね」 商人が持っていた帳簿は、呪いの刃への手がかりとなるはず 召使人形と手分けして、探らなければならない %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% これは、新しい群れの記憶 手にした三冊目にはイクタルスの呪いの秘密が記されていた  呪詛は遠い地、深奥の魔術とされるもの  血で綴られた言葉である 守護者は、記された類の魔術について、読んだ覚えがあった 「知ることこそが、守ることに繋がる」 そう信じ、蓄えた知識の… 先生との学びの賜物だ 守護者は、確かに知っている 風鳴り丘を駆ける馬群を、近海の海賊の冒険譚を 恐るべき「施設」を、流浪の絵描きの伝承を それから… 深き森の魔女の、呪われた魔術を %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% これは、新しい群れの記憶 群れを守るため、守護者は決断を迫られていた 目を閉じ思案していた守護者の元に、誰かが近づいてくる 「干渉することを、私は好まない」 そこには、人形の姿をした娘がいた この群れに加わった新しい羽だ 「だが、あの魔女には借りがあってな  知ってからでも、遅くはないだろう」 それだけ告げ、人形は一枚の紙片を置き、去っていった %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% これは、新しい群れの記憶 守護者は、ついに隠者を手にかけなかった 彼女は確かに、古い群れから翼を奪う呪いを生んだ だが、新しい群れに欠かせぬ、一つの羽でもあるのだ そのどちらも、守護者は知っている 守るべきものは定まった ならば、騎士の証をかぶるとしよう お節介な大男が直した、おあつらえ向きの兜 それを手に、守護者は新たな一歩を踏み出した 夜の蝕みから逃れ、私は目覚めた 関節の具合を確かめながら、靄のかかった記憶を辿る …だが、ここは何処だ 何ともかび臭い空気ではないか 状況を掴む必要がある まずはそこから始めるとしよう %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 円卓の者と共に戦うにつれ、幾らか記憶の靄が晴れてきた 鏡を見る そう、私はダフネ 誉れ高き人形師の一族、ノーザン家の娘だ だが、あの嵐の日… 夜がお屋敷のすべてを飲み込んでいった そうして私は、復讐者となった この人形の体に身をやつして %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 人形の体となっても、夢は見る 嵐の夜、お屋敷に動くものは他に無い 慣れぬ人形の体で、私はあてどなく彷徨う そして、頬を何かが撫でる 決まってそこで、夢は途切れる 起き抜けに、鏡を見る。その感触を確かめるために 「夢の中だけでは、飽き足らぬか」 頬に黒い筋のような痕がついている どうやら私は、随分と夜に気に入られているらしい よもや人形の体まで、追ってくるとはな %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 鏡を前に、夜の蝕みを覆い隠す そうしながら、化粧道具をくれた召使人形の言葉を思い出す 「あなたサマの記憶には、大きな穴が空いており  そこを足掛かりに、夜が根を張っているご様子だとか」 隠者と言う魔女の見立てらしいが、どこまで信用したものか それにしても、己で化粧とはどうにも慣れない お屋敷ならば、人にやらせるものを どうにか化粧を終え、鏡に映った滑らかな頬を撫でる そう言えば、この人形の名は何だったか… %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 鏡を見る 夜の蝕みが、よりいっそう進んでいる 「…不憫な」 お爺様が創ってくださった、私のかわいい子 人形の名を呼ぼうとしたが、やはり出てこない 代わりに、その頬を撫でる この身に巣食う夜を断つ、その術を探らなくては ふむ… 円卓の巫女ならばあるいは 復讐者は、いつの間にか眠りに落ちていた 意識が戻ると、見覚えのある建物の中にいた 忘れもしない、嵐の夜の屋敷 あの夜に、復讐者は立っていた 廊下の奥の一室に踏み入ると、次々に人を象ったものが現れた 襲うとも縋るともいえる澱みを、復讐者は打ち払っていった 目を覚まし、魔女の顔を見る 痣は見えず、人形の体も落ち着きを取り戻したようだった 事態は解決した…そう伝える復讐者だったが 色濃く影を落とした蟠りがあるとは、口にしなかった %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 人形もまた夢を見る 私はそれを知っている お嬢様が、私の頬をそっと撫でる 「お化粧をしましょうね、ダフネ」 そうしてもらうのが、とても好きだった %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% 鏡に映し出された頬を撫でる 期待した柔らかさも、ぬくもりも、この指にはない どうやら私は、もう一度向き合わねばならない あの嵐の夜に %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% %null% ミニアチュールを握り、鏡に向き合う お嬢様はもういない この頬を撫でてもらうことも、叶わない 私は元より人ではなく もはや人形とも呼べぬだろう ただ為すべきことだけがある そうして私は、復讐者となった あの嵐の夜を、終わらせるために